なぜ相模Ingress部は研究で、相模原市立博物館の活動なのか

相模Ingress部は、Ingressを楽しくプレイする部活動…ではありますが、実はれっきとした神奈川工科大学情報学部情報メディア学科白井研究室の研究であり、相模原市および相模原市立博物館と協働事業として2年がかりで進めてきた事業であります。

こちらにSlide Shareプレゼンテーションを共有します。

http://www.slideshare.net/aquihiko/ingress-42896142

博物館ネットワーク事業:
Ingressを用いた フィールドミュージアムの開発

神奈川工科大学 情報学部 情報メディア学科 白井研究室 小瀬 由樹,美濃部 久美子,木村 知之,白井 暁彦

【補足】

神奈川工科大学白井研究室と相模原市立博物館の協働事業として,相模原市立博物館情報ネットワークセンター事業『みんな でつくる相模原「知的探求散策アルバム」』 (通称:スマ歩さがみはら) みんなでつくる相模原「知的探求アルバム」というプロジェクトがあります.

数年来のテーマであった「津久井エリアを含め,広くなった相模原市.この市域全域をミュージアムにすることはできないか?」という市政側からの要求に,神奈川工科大学の学生と先生で取り組む,協働事業なのです.

平成25年度の協働事業による調査で2000人を対象としたアンケートを実施したところ「 若者世代の来館者が少ないこと」がわかりました.

向井優善,美濃部久美子,小出雄空明,田所康隆,白井暁彦: “博物館ネットワーク事業:相模原市立博物館にはどんな人が来ているか “, 相模原市立博物館 学びの収穫祭 2013,  2013年11月16日.

向井 優善, 美濃部 久美子, 小出 雄空明, 田所 康隆, 白井 暁彦, 木村知之: “博物館ネットワーク事業:相模原市立博物館の来館者調査”, 相模原市立博物館研究報告, pp.73-76, , 第22集, 平成26年3月31日(2014).

家族やお年寄りにもアプローチしつつ,パブリックミュージアムの弱点「中高生」,この層をねらいたい!

若者世代に地域の博物への 興味・刺激を与えるきっかけを作るには!?

ということで,調査研究,独自アプリやサービス開発や,展示物開発写真ワークショップ「はやぶさの日」応援企画地元紹介動画地図など様々な活動を通して本活動の課題と方法を明らかにしていきました。

その活動の一角に「相模Ingress部」があります。Google発のベンチャー企業 Niantic Labsが運営する代替現実ゲームであり,我々のプロジェクトとほぼ同時期に開始しています.当時はAndroidだけであり,またUIが英語のみという障壁があり(博物館の多くのお客さんは子供とお年寄りなのです!),独自アプリの開発という方向性で検討していましたが,神社,史跡,ローカルビジネス (ポータル)を使った陣取りゲーム,しかも世界規模で社会実験が行えている点が有利な点でした(我々は初期にGoogle+をつかっていましたが,個人の扱いや仕様変更が多すぎて継続利用には難がありました:「スマ歩さがみはら Google+」). Ingressには「スマ歩さがみはら」がターゲットとしていた自然や風景は含まれていませんし,XMという未知のエネルギー,SFが含まれていますが,担当の学芸員・木村知之さんが次第にこの世界観を受け入れてくれることにより,より多くの人々が「Ingress部」の活動に参加してくれています.これは主担当の学生・小瀬さんによる「相模とか,部活動とかちょっとダサいほうが参加しやすくていい」というコンセプトが生きていると思います.

先行事例として宮城県石巻市の事例が実施されていたことも我々を勇気づけました.ポータルを利用した名所説明する石川県金沢市 「ビューティーホクリク」なども素晴らしいと思います.

本格的に活動を介した時点で相模原市内にはすでに 700程度のポータルが存在しているました(現在はローソンポータルのおかげでさらに増えています).このプレゼンテーションでは相模原市のポータル数,オススメ探訪エリア(相模大野,原当麻,小田急相模原,相武台下 ,淵野辺,原当麻エリア)などを実際に足で調査したり,配布物「相模Ingress部員手帳」として配布したりしています.

 ちなみに相模原市立博物館には我々よりももっと先に,ボランティアの街歩き「民俗調査会」が探訪会を実施しています.普段触れることのない”上の世代”,つまりパソコンとかスマートフォンとかを使わない人々との交流や,博物館の展示物である「一遍上人」が祀られる「時宗当麻山無量光寺」や,「狸菩薩」などはすでに親しみがある観光資源(=知的探求を刺激するターゲット)でした.岡本太郎作「赤い手・青い手」,「県立相模原公園」や「相模大野北口のコリドー街商店街」の銅像などもアートポータルとして紹介されるにつれ,あまり興味がなかった銅像や,神社の鳥居にも詳しくなっていきます.また地元の青勢(お察しの通り,相模Ingress部はなぜか緑が多いです)が強いエリア,例えば上溝エリアやその周辺にあるまるで中高生が立ち上げたかのようなネーミングのポータル群から,そこに生きる人々の様子なども肌で感じられるようになりました. 横山公園にある「芭蕉句碑」というポータルでは,実際に芭蕉の句碑があり,達筆すぎる書で読むことができないのですが,
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ポータルの解説に 「陽炎や 柴胡の原の 薄ぐもり」とあり,「柴胡の原」というキーワードから,博物館で活動する「カワラノギクを守る会」カワラノギクは相模原エリアに咲く絶滅危惧種IB類)のページの一角にであったりと,確実に市域全域をフィールドにした,かつ世代を超えたフィールドミュージアムが体現できていることを感じております(ご高齢の活動者が多いのでHPを維持し続けるのは本当に大変なのです!)

Ingressの動作を乱す太陽フレアについて,天文の学芸員さんとTwitterで絡んだりもします.こんなことは2年前の相模原市立博物館ではありえないレベルのネットワーク活動だと思います.

最近ではやっとMissionsが使えるようになり(そのためにL9まで必死になってレベル上げていた経緯も…),にこにこ星ふちのべ商店街と連携したMissionsなどもさっそく立ち上げ,商店街やプレイしていただいた方から反響をいただいております.そして2015/1/4の初詣イベントにつながります.


https://twitter.com/kogure/status/545773959602388993

卒論としては,この活動を支える技術,例えばまだ現れていないポータルを 先んじてBlogで紹介する技術,Wordpress用のマップ表示プラグイン「photomapper」や,各種SNS(Twitter,Facebook,Google+)との連携技術,運用テクニックの確立,その軸になる「スマ歩“相模Ingress部”さがみはら」作成(ちなみに相模原市立博物館のサイトも白井研究室が開発し,運営軌道に乗せるところまでお手伝いしております).配布物

そしてIngressと多重化技術,クラウド技術を使ったサイネージへの展開などが予定されています.ハイカーなどが多い緑区で,デジタルサイネージとWifiスポット,充電などの「ITオアシス」を今年度中に整備していきます(残念ながら,本事業は今年度をもって終了する予定です).

 

これらすべてが,研究なのです.情報メディア分野とフィールドミュージアムの研究.
最先端の技術と,人の動きに注目したIT分野の研究です.
小瀬君は頑張ってこの卒論を完成させなければ卒業できません.

(エンタテイメントシステムを研究する白井研究室のそのほかの論文リストはこちらから)

そんなわけで,みなさま,今後とも応援よろしくお願いいたします!

相模Ingress部 世話人  白井暁彦(akilabo:L9)

最後にもう一度宣伝:初詣イベント,ご参加ください!(参加登録は12/30まで)

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